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音楽エッセイ

火星まであと30秒

 メタラーとSF好きは似ている。
 こんなことを書くと(両方から)怒られそうだが、似ているのだからしょうがない。共通点は以下の通りだ。
1) 自分がメタラー(SF好き)だと公言したがる。
2) 作品をまず「メタル(SF)かどうか」で判断する。
3) 他人に自分のお気に入りを薦めたがる。
4) 元祖がどれかという議論が大好きである。
5) アニメによくはまる。
 最後のはともかくとして、身に憶えのある方も大勢いるだろうと思われる。しかし、なんでもいいから質の高い作品を探しているとき、隣にいるとこれほど心強い連中もいない。

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 僕のいちばん好きなSF小説ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』である。

 これに、かつて小野不由美が帯コメントを寄せていた。いわく、「SFにして本格ミステリ」。まったくその通りだし素晴らしいキャッチコピーだと思う。SFをSFとしてだけ紹介するなら小野不由美が書く理由がない。

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 去年の秋ごろ、とにかくなんでもいいから最近のミュージシャンを開拓したいと思っていた僕は、知り合いのメタラーに話を聞いてみた。彼はブラック・ヴェイル・ブライズなどいくつかを挙げてくれた後で、ちょっと言いにくそうに付け加えた。
「30セカンズ・トゥ・マーズは、二枚目はすっごくヘヴィでよかったんだけどさあ、三枚目でなんかポップになっちゃってメタルらしさが薄くなって残念」
 性格の悪い僕は彼のこの言葉にぴんときた。『火星まであと30秒』という妙にSFなバンド名も耳に残っていた。家に帰ってiTunes Storeにつないだ僕は、メタラーの彼が薦めてくれた二枚目ではなく、三枚目を真っ先に買った。

This Is War - Thirty Seconds to Mars

 メタラーがポップすぎてメタルじゃないと評したらそれはもう絶対に傑作だろう、という僕の直観は、果たして正しかった。このアルバムは2012年最大の収穫となった。二百回くらい繰り返して聴いた後で二枚目のアルバムも買ってみたが、そちらも直観通り、さほどはまることができなかった。こういうことをしているから友達がいなくなるのかもしれない。
 それはともかく30StMだ。甘く切なく激しいシャウトに耳に残る美しいメロディにハードロックを基調とするもののシンセを使いまくるという、僕が21世紀のロックバンドに求めるものすべてが詰まっていた。これほどの出逢いがあるのならメタラーの友達など惜しくない。すみません嘘をつきました。これからも友達でいてください。