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音楽エッセイ

ポップすぎると叩かれたら必ず名作である説について

もうだいぶ前になるが、本ブログでこんな記事を書いた。

メタラーがポップすぎてメタルじゃないと評したらそれはもう絶対に傑作だろう

 この記述、半分は記事を面白くするための盛りだが、もう半分は真実だと自分でも思っている。つい最近、この説を見事に補強する例と出逢ったのだ。

ONE OK ROCKである。

 

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ワンオクはもう何年も前にちらっと聴いたことがあって、そのときの感想はたしか「ヴォーカルはすげーが曲は性に合わないかな……」というあたりで、ちゃんと聴き込まずに放置していた。

ところがサブスクリプションによって出逢いの機会は一気に増え、ニューリリースの項目で僕は彼らの最新シングル"Renegades"を耳にした。

地の果てまで吹っ飛び、土下座し、現時点での最新アルバムもすぐさま聴いた。

 

Eye of the Storm

Eye of the Storm

昼も夜も聴きまくり、2021年に入ってからいちばん多くリピートしているアルバムになった。

ところでこの最新アルバム、調べてみると評価が真っ二つで、特に古参のワンオクファンからの評判がすこぶる悪い。Amazonレビューには「アメリカでの売れ線狙いに迎合するな」「昔のハードだったワンオクを返してくれ」といった★1や★2がずらりと並んでいる。

わかる。わかるぞ。その感想にはまったく同意できないというかむしろ正反対だが、正反対だからこそ言いたいことがよくわかる。僕はここから"Ambitions"、"35xxxv"と時系列を遡って聴いていったが、どんどん自分の好みから外れていくので結局"Eye of the Storm"しかローテーションしていない。

これらのレビューを目にしてふと思い出した一枚がある。

LINKIN PARKチェスター・ベニントン生前最後のアルバム"One More Light"だ。

One More Light

One More Light

 これまたヘヴィなラップロックを愛好する古参のリンキンパーカーたちからはぼろくそに叩かれたアルバムで、悪評の内容も"Eye of the Storm"が浴びせられたものとそっくりだ。売れ線狙いのポップソングばっかり。ハードでヘヴィな頃に戻ってくれ……。

もうお察しかと思うが僕はもちろんこの"One More Light"も大好きである。

 

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ここからは完全に僕の推測だが、"Eye of the Storm"はほんとうに"One More Light"を目指したアルバムではないだろうか。世間の反応が似通っているという点だけではない。なんといってもどちらの盤にも同じくKiiaraと共演した美しいバラードが含まれているのだ。

それでいて、"Eye of the Storm"には"One More Light"に漂っている閉塞感が微塵もない。これからもバンドの未来は洋洋と開けていて傑作をいくらでも生み出してやる、という気概に満ちているし、実際に"Renegades"が出た。これこそが、チェスターが求め続けてけっきょく手の届かなかった"もうひとつの光"ではないだろうか。

きっとONE OK ROCKLINKIN PARKの果たせなかった道を征き、まったく知らない世界を僕らに見せてくれるだろう。次のアルバムが待ち遠しい。

 

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ということで、「ヘヴィさを売りにしているアーティストがポップすぎると叩かれたら必ず名作である」は非常に心強い実例をまたひとつ獲得した。これはもう完全に定説になったといっていいのではないか。

同じように叩かれている作品があったらぜひ教えてください。喜び勇んで聴きます。