音楽は稼いだ!!

音楽エッセイ

神曲プロデューサー楽曲解説

文庫版、発売中です。 神曲プロデューサー (集英社文庫) 作者:杉井 光 集英社 Amazon 単行本発売時(なんともう十年以上も前!)に、紹介記事を真面目なやつと不真面目なやつ、二つも書いたが、そういえば楽曲解説はしていなかったな……と思い出し、せっかく…

楽園ノイズ6楽曲解説

楽園ノイズ6 (電撃文庫) 作者:杉井 光 KADOKAWA Amazon 発売中です。 いつもの楽曲解説。 Enter Sandman(Metallica) 真琴の「人生はじめての曲」、メタリカ最大のヒット曲。 こんな歌で寝かしつけられたら悪夢確定だろう。MVでも子供が寝苦しそうに悶えて…

楽園ノイズ5楽曲解説

楽園ノイズ5 (電撃文庫) 作者:杉井 光 KADOKAWA Amazon 発売中です。 いつもの楽曲解説――といきたいところだが、実は今巻、「少し音楽を休んでみる」がテーマなので、なんと最後に一曲しか出てこない。 Raining (Cocco) 一曲しか出せないが非常に重要なシ…

「聴いてはいけない」から始めるクラシック入門

「クラシックってなにから聴けばいいの?」 ……という質問を、これまでにたくさんぶつけられた。 『さよならピアノソナタ』を書いて以降、なんかクラシック音楽に詳しい人間だと思われてしまったらしく、作家同士の飲み会などでことあるごとに訊かれる。 これ…

楽園ノイズ4楽曲解説

楽園ノイズ4 (電撃文庫) 作者:杉井 光 KADOKAWA Amazon 発売中です。 いつもの楽曲解説。 といっても第一編のV系の話には実在曲は出てこない。 『黒死蝶』というバンド名はもちろん黒川と蝶野という名字からとっているのだが、オリジナルメンバーのあと二人…

楽園ノイズ3楽曲解説

楽園ノイズ3 (電撃文庫) 作者:杉井 光 KADOKAWA Amazon 発売中です。 いつもの楽曲解説。 Arms of Another (ヘレン・シャピロ) ヘレン・シャピロは若い頃に英国でヒットを連発したポップス/ジャズ/ゴスペル歌手だが、年を重ねてからの活動は落ち着いており…

ポップすぎると叩かれたら必ず名作である説について

もうだいぶ前になるが、本ブログでこんな記事を書いた。 メタラーがポップすぎてメタルじゃないと評したらそれはもう絶対に傑作だろう この記述、半分は記事を面白くするための盛りだが、もう半分は真実だと自分でも思っている。つい最近、この説を見事に補…

楽園ノイズ2楽曲解説

おかげさまで2巻発売。 楽園ノイズ2 (電撃文庫) 作者:杉井 光 発売日: 2021/05/08 メディア: 文庫 いつものように作中に登場する楽曲を紹介していこう。 ○凛子編 ・ピアノ協奏曲第2番ト短調(プロコフィエフ) この凛子編は、クラシックピアニストとしての凛…

ホワイトアルバム現象

ホワイトアルバム現象、という言葉がある。 なじみのない言葉だろうし、説明すると少々長くなるがお付き合いいただきたい。 Self-titled Album、つまりアーティスト名と同じ名前のアルバムというものがよくある。これはデビューアルバムであることが圧倒的に…

通ぶりたい人のためのQUEEN名曲10選

せっかく埃を払ったブログなので新規記事を書くことにする。 映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしてからずいぶんたった。日本にも五回目だか六回目だかのQUEENブームが到来したという。 新規ファンが増えるのはいいことだ。ところでQUEENを最近聴き…

楽園ノイズ楽曲解説

ということで発売中である。 楽園ノイズ (電撃文庫) 作者:杉井 光 発売日: 2020/05/09 メディア: 文庫 久々の青春音楽小説で、久々の楽曲解説。長らく止まっていたこのはてなブログの埃を払うことになった。 ○凛子編 ・河口(團伊玖磨) 混声合唱組曲『筑後…

さよならピアノソナタep楽曲解説

超絶久々にこのブログを更新する。 よく見てみたらさよならピアノソナタのencore piecesの楽曲解説が未掲載のままだった。発掘してきたので再掲。 ●"Sonate pour deux" ・ピアノソナタ第31番変イ長調(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン) これは、話の…

東池袋ストレイキャッツ曲目解説

発売中である。いつものように曲目解説。第1話と第2話には実在する曲名は出てこないので第3話から。 ミウがハルにリクエストしたのはもちろんこの曲だ。 恥ずかしながら僕もジョン・デンヴァーはこの一曲しか知らない。みんなそうだよね? ね? ファンの方々…

こもりクインテット!(1)曲目解説

単行本第1巻発売中である。 毎度のように登場楽曲解説といきたいところだが、実は僕は(原作者のくせに)こもりクインテットの五人がいったいどんなサウンドを奏でているのかうまく想像できない。というか、このバンドの編成はあきらかに無理がある。擦弦楽…

さよならピアノソナタ4曲目解説

旧ブログ消滅にともない、過去作の解説記事を書き直し中。 ネタバレの記事なので未読の人は下のアフィリエイトをクリックして買って読んでから続きをどうぞ。 あとがきの日付を見ていただければわかると思うが、電撃文庫の原稿はだいたい刊行の四ヶ月前にあ…

ワンマンバンドという愚かな言葉

僕は「ワンマンバンド」という言葉が大嫌いである。 ところでこの言葉には二つの意味がある。本来の意味(1)と、和製英語の意味(2)だ。 1) ストリートなどで複数楽器を単独演奏するパフォーマー。 2) ある一人のメンバーだけの力に依存しているバンド。 (1)で…

さよならピアノソナタ3曲目解説

旧ブログ消滅にともない、過去作の解説記事を書き直し中。 ネタバレの記事なので未読の人は下のアフィリエイトをクリックして買って読んでから続きをどうぞ。 さて、DBMS公式という数学定理があるのをご存じだろうか。 T = P ^ (1 + 0.038N) 数式中のTは執筆…

神曲プロデューサー

今さら僕が言うまでもないことだが、宇多田ヒカルは可愛い。 しかし、宇多田ヒカルが可愛いことはみんな知っていても、宇多田ヒカルがものすごく可愛いことや、宇多田ヒカルがめちゃくちゃ可愛いことや、宇多田ヒカルがあり得ないくらい可愛いことまでは知ら…

神曲プロデューサー(まじめ)

昨日のアレではアフィれるものもアフィれない気がしたのでまじめな記事も書くことにする。いや、アレだって大まじめに書いているのだが、それはそれ。 集英社から手紙をもらったのは一昨年の二月だった。手紙、である。郵便で仕事を依頼されるのははじめての…

さよならピアノソナタ2曲目解説

旧ブログ消滅にともない、過去作の解説記事を書き直し中。 ネタバレの記事なので未読の人は下のアフィリエイトをクリックして買って読んでから続きを読みましょう。 この巻には歴史的価値がある。なぜかというと、僕が池袋で仕事場を借りるようになってから…

さよならピアノソナタ曲目解説

旧ブログが消えたので、さよならピアノソナタや楽聖少女の解説記事がデッドリンクになってしまった。そこでこちらのブログでこつこつと書き直すことにする。当然ながら小説もアフィるので一石二鳥だ。ネタバレ全開の記事となるので、未読の人は下記のアフィ…

音楽をあきらめた原因の二枚

いちばん好きな小説家はだれかと訊かれたら僕は答えに迷わない。「杉井光」である。 あきれてブラウザを閉じる前にもう少し話を聞いていただきたい。そもそも、ほんとうに読みたい物語を他のだれも書いてくれないから、僕は自分で書いているのだ。いちばん好…

白薔薇になったチェリスト

『大師は弘法に奪われ、太閤は秀吉に奪われ、楽聖はベートーヴェンに奪われる』ということわざをご存じだろうか。 三つ目は僕の捏造だが、とにかくそういうことわざがある。本来独占するようなものではない栄誉を、一人があまりに有名になってしまったために…

火星まであと30秒

メタラーとSF好きは似ている。 こんなことを書くと(両方から)怒られそうだが、似ているのだからしょうがない。共通点は以下の通りだ。 1) 自分がメタラー(SF好き)だと公言したがる。 2) 作品をまず「メタル(SF)かどうか」で判断する。 3) 他人に自分の…

こもりクインテット!

今年最も熱い漫画新連載、『こもりクインテット!』が月刊コミック電撃大王で始まった。普通、アフィリエイトといえど自作をほめたたえるのはなかなか照れくさくてできないのだが、『こもりクインテット!』は七割方Tivさんの作品である。僕はせりふとト書き…

もう半分のフジファブリック

作家同士で集まってお遊びでバンドをやろうとなったとき、最初の課題曲に選ばれたのは無謀にもフジファブリックの『桜の季節』だった。ベーシストの鈴木大輔のチョイスである。キーボードが活躍する曲がよかろうという配慮だったのだろう。 そんなわけで僕と…

彼女のバリエーション

僕は変奏曲が異様に好きである。 変奏曲というのは、主題があって、それを様々にアレンジしながら繰り返していく曲だ。まずクラシック音楽の文脈でしか出てこない用語だけれど、現代の楽曲でもたとえばレッド・ツェッペリンのStairway to Heavenなどはだいぶ…

死神とバースデイ

小説家がBUMP OF CHICKENを紹介するのはとても勇気がいる。 まずもってして藤原基央はほとんど小説家である。『ラフメイカー』『ダンデライオン』など、そのまま掌編小説として見ても見事なものだ。小説家のくせにオリコン1位をシングルでもアルバムでも獲り…

夢見る頃を過ぎても

正月に帰省したときに、父が一枚のCDを持ってきて言った。 「ヒカル、おいヒカル。最近ちょっといいバンドを見つけたんだ」 「なに?」 「オアシスって知ってるか?」 ……オアシス今さら見つけたのかよ? ナイツの漫才の入りみたいな話だが、実話である。 * …

グールドのビート

三度同じ話で申し訳ないが、僕がいちばん好きなクラシックの作曲家がベートーヴェンだというとやはりみんな驚く。もちろん「えっ、小説で書いてることそのまんまだったの?」という驚きである。 僕の両親はそろってクラシックが好きだったが、ベートーヴェン…